舞台『大地(Social Distancing Version)』を観て来た

 昨夜はサンケイホールブリーゼで三谷幸喜作・演出の新作舞台『大地(Social Distancing Version)』を観て来た。コロナ禍で芝居が見られなくなって、芝居やミュージカルを観るのは2月の『キレイ―神様と待ち合わせした女―』以来だ。この半年、舞台で役者が演技するのを見られなかったわけだ。三谷幸喜の芝居となると、なんと2014年の「国民の映画」の再演以来となる。一時期は三谷幸喜の芝居にハマっていたんだけど、すっかり食傷気味になって、ずっと遠ざけていたのだ。今回も別に三谷幸喜の芝居だからというよりもコロナ禍の時世になって初めてのメジャーな公演がこの「大地」だったというわけで、単に舞台に飢えていただけです。
 三谷幸喜によると、この新作のプロットは昨年から考えていたそうで(当たり前だが)、このコロナ禍の状況を踏まえて作られた芝居ではないのだそうだけど、それにしてはオープニングの三谷本人による築地小劇場からの~のアナウンスからして、満足に芝居ができなかったこの半年の俳優・演出・舞台を支える人々の気合いの乗ったストーリーになっている。物語の舞台は、「とある共産主義国家の収容所。独裁政権が遂行した文化革命の中、反政府主義のレッテルを貼られた俳優たちが集められ、政府の監視下で広大な大地を耕し、家畜の世話をしていました。」という設定で、セットの転換は無し。ずっと収容所の第3チームの宿所(板張りの通路で碁盤の目のように仕切られた中に9マスの空間、内上中段の6マスにはチームメンバーのベッドが1つずつ置かれており、それぞれのベッドの主は基本、そのベッドの上や傍らで演技する、これもソーシャルディスタンスか)でストーリーは進んでいく。
 ストーリーはその宿所に「無駄な筋肉(by藤井隆)」を強調する映画スターのブロツキー(山本耕史)が加わるところからスタート。コロナ禍で筋トレばっかりしていて一層筋肉が付いたのだそうな。女形の役者ツベルチェクを演じる竜星涼って初めて知りました。もう俳優歴10年にもなる役者さんなんですね、覚えときます。パントマイムの第一人者で湿布欲しさに仲間を売るプルーハ(浅野和之)は、さすがの演技でしたね、強風に立ち向かう演技はが〜まるちょばにも負けてません。ピンカス(藤井隆)は大物役者の揃う中、唯一の大道芸人。こちらもストーリーにいいアクセントになってました。演劇を学ぶ大学生ミミンコ(濱田龍臣)は演技はまだまだですが、皆に可愛がられています。芝居のナレーションも務めてます。他には”座長”と呼ばれる大御所俳優のバチェク(辻萬長)。役者兼演出家のツルハ(相馬一之)というそうそうたる俳優陣がメンバーで、そのチームの指導員で芝居好きのホデク(栗原英雄)と、チームの連絡役を務めるのが、主演のシャバでは三流役者兼大道具だったチャペック(大泉洋)。さらにホデクの上司である政府役員のドランスキー(小澤雄太)がいます。男性の宿所なのでオトコばっかりです。
 この芝居、2幕構成(休憩15分)のおよそ2時間50分の芝居ですが、長さは全然感じませんでした。(コロナ禍の最中なので休憩無し2時間以内に納めてくるかと思いましたが、そういう配慮はなかったようですね。)
 1幕は女形のツベルチェクがドランスキーの慰み者にされるところがヤマ場。慰み者の報酬である「ゆで卵」に反抗してメンバーが身振り手振りと会話だけで豪華な晩餐を演じて見せたところはさすが~としか言えません。ただ、そこにもいちいちミミンコのコメントが入るのがちょっと鬱陶しかったかな、お前(ミミンコ)が感じてることなんざ、観客みんな感じてるって。その晩餐にチャペックが入れないあたりから終盤への布石はできていたのかなぁとは思いましたね。
 2幕はなんと、女性収容所にいるミミンコのダンサー志望の彼女・ズデンガ(まりゑ)とミミンコを引き合わせる、というイベントからスタート。ここで唯一の女性が登場。ズデンガも入れてホデクの書いた脚本の芝居を再構成していい劇中劇を作ってめでたしめでたし、というハナシになるのかしら、と思いながら観てましたが、私の予想は甘かったですね、お芝居は苦~い方向に進んでいきます。でも、宿所でのドランスキー引き留め工作の数々は面白かったですね。バチェクの小芝居サイコーでした(「お前の目をよく見せてくれ」って言われたドランスキーがバチェクの正面に回ったところで、舞台上の他の役者陣から正面はダメ、正面はダメ、横に並んで、ってツッコミ入ったのは当世流のギャグですかね?)。ブロツキーの将校はホントに映画スターかよ?という面白さだったし。ただ、惜しむらくは、谷の向こうに行くことになった時のチャペックの振舞いがちょっとわざとらしかったかなぁ。チャペックが演技下手の想定だからって大泉洋まで下手になったらあかんのでは?
 ということで、大笑いもさせてもらいましたし、「セットも照明も無くても役者さえいれば芝居はできる」「いや観客がいなければ芝居はなりたたない」という三谷流演劇論も拝聴つかまつりましたが、評価点は5点満点の4点です。

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