映画「燃ゆる女の肖像」を観て来た。

 昨夜TOHOシネマズ西宮OSでレイトショー(「密」を避けるため、今年はレイトショー鑑賞が多いかも。お得だしね)で「燃ゆる女の肖像」を観て来た。2019年・第72回カンヌ国際映画祭で脚本賞とクィアパルム賞を受賞したラブストーリー。この類のフランス映画を観るのは「アデル、ブルーは熱い色」以来、6年振り。あの映画は現代の学生が大人になるまでの10年くらいの時の流れがあるけど、この映画はブルターニュの離れ小島での2週間ほどの物語。島の館には画家のマリアンヌ(ノエミ・メルラン)、その雇い主の伯爵夫人(バレリア・ゴリノ)と婚礼準備のための肖像画の対象となる娘エロイーズ(アデル・エネル)、館に勤めるメイドのソフィ(ルアナ・バイラミ)という女性4人だけが出てくる。監督もセリーヌ・シアマという女性。なかなか濃密な122分だった。
 マリアンヌは舟から落ちてしまった荷物を取り戻すために海に飛び込んで荷物を確保するほどのガッツと意志の強さが視線に現れている。その強い視線でエロイーズをキャンバスに写し取ろうとするのだけど、彼女の表面的な特徴しか表せておらず、エロイーズに自分に似ていないと言われてしまう。映画でエロイーズに似ているけどちょっと違う、っていう肖像画がちゃんと用意されていて、映画を観ている者にも「これは違うでしょ」と思わせるあたり、芸が細かいわ。最後に仕上がった方の絵を観た時、確かにエロイーズがそこにいる、と思えたもの。でもリアルにエロイーズが描き表わされ過ぎてて、婚礼用の肖像画としては生々し過ぎかと思ったほど。
 館の中のシーンでは絵を書いているマリアンヌも、マリアンヌに観られているエロイーズも胸から上のカットが多くて、画家の目線で画面を決めてるんだなぁ、と思いながら観ていた。前半意思疎通がうまくいかない2人の媒介としてメイドのソフィがいるのかと思ってみていたら、後半2枚目の絵にとりかかってから、一気に面白さが増す。後半メイドは画家とモデルの媒介から共犯者のような同志になっていく。とはいえ、2人の仲を壊すようなことはなく、上手い関係性が描かれていたように思う。後半の6日間に3人がどんどん変わっていくのが観ていてホントに面白かった。カードゲームのシーンも秀逸だったけど、オルフェが黄泉の国からようやく出られそうな瞬間に振り返ってしまう話に、真剣に怒るソフィ、エロイーズ、マリアンヌそれぞれのオルフェと妻に対する解釈が3人の考え方の違いを表していて、これも面白かった。あと堕胎のシーンをソフィとエロイーズで再現して、マリアンヌにそれを描かせるシーンも良かった。
 舞台となった島の映像は美しく、なぜかアニメの「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を思い出してしまった。海の波は結構荒くて、彼女たちをはね返す何かを表しているようにも見える。結婚を選択するしかない、エロイーズが自らそれを決心したのもこの海。一見自由に画家稼業をやっているように見えるマリアンヌも女性であるというハンデを抱えて自由に画題を選べないジレンマを感じさせるのもこの海。この島には伯爵夫人の館以外にも村人の営みがあるようで、その祭りで里の女性たちによって唄が唄われるシーンがクライマックス(ここにも男性はほとんど出てこない)。エンドロールにも披露されるこの里謡がすごく良かった。この祭りで薪の炎がマリアンヌと見つめ合うエロイーズのドレスの裾に燃え移るのだけど、これが映画の最初の「燃ゆる女の肖像」という絵に表されているんだけど、映画の最初、この絵をちゃんと見ていなかったので、もう1回観たいです。それだけが心残り。
 評価点は5点満点の4点。エンディングが、マリアンヌの焼きもちで終わってしまったのが、釈然としなかったので。
 

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